国立工芸館 こどもと その2
工芸館への道中。
懐かしい風景にいつも安心感を覚える。
以前は金沢に住んでいた。
子ども達が通っていた幼稚園を横切る。
幼稚園♪
と息子が目で追っていて、メロンパン屋さんが無くなっていることに気がついた。
メロンパン屋さんが無い!
と悲しそう。
メロンパン屋さんはフルーツ大福屋さんに変わっていた。
幼稚園のすぐ側にはメロンパン屋さんがあって、そこはアイス入りが売りであった。
しかし子ども達はアイス入りを食べたことがない。
訳あっていつも普通のメロンパンだった。
アイス入りを食べている人を観察していた私。
そこでは大惨事が起こっていた。
アイス入りに苦戦して手をベトベトにさせている。
しかも大人が。
アイス入りに目を輝かせている幼子達。
戦慄が走る。
うちの子ども達はバニラアイスよりチョコレートアイスよりも抹茶派。
お茶屋さんの抹茶アイスが大好き。
スッキリした甘さが好み。
先ずは娘を落とす。
あのね、ただでさえ甘いメロンパンだよ。
メロンパンの上のとこはね、バターとお砂糖の塊なんだよ。
そこにアイス、しかもバニラアイスって甘すぎて気持ち悪くならないかな?
メロンパン×アイスはたぶん美味しいと思う。
きっとバランスを考えて、バニラアイスは甘さ控えめなんじゃないかと思う。
しかしこの幼子達に教えてしまうと、その度にアイスの洗礼を受けることになる。
願わくは大人になってから自己責任で食べてほしい。
私の囁きに娘は素直に共感してくれた。
よくやった、私。
弟というものは姉の真似をするもの。
娘を攻略すれば自ずと息子も後に続く。
そんなメロンパン屋さんを悲しそうに目で追う息子が愛おしい。
彼は感受性豊かな子。
思い出を大切にする我が子が誇らしい。
私はメロンパンアイス事件を封印しようと決めた。
兼六園を横目に坂を登ると木々の間からレンガ造りの建物が見えてくる。
その奥のグリーンと白が目に留まるステキな建築物が国立工芸館。
とはいってもグリーンと白の方は事務所らしい。
雨というのに車は列をなしていた。
10分もしないうちに駐車できていざ工芸館へ!
ワクワクする!
私は雰囲気あるものが好き。
この階段。
傷や色ツヤが歴史をうかがわせる。
凝った装飾はきっと職人さんならではの技。
機械での大量生産には成せない味がある。
私はハイテンション。
そんな私を息子は心配そうに見ていた。
タッチパネル式の説明コーナーがあって、私はウキウキで押してはあーだこーだ息子に話し掛ける。
2台あって、他にお客さんがいないので一人一台使えた。
にも関わらず私は興奮のあまり、息子のタッチパネルに近づいて勝手に押しては邪魔をしていた。
息子からあっちでやれば?
と言われて我に返る。
そのうちお客さんが来たので息子側に移る。
しばらくパチパチやった後で次いこ~とルンルンな私を尻目に息子はホーム画面にきちんと戻している。
ハッとした。
私よりしっかりしている。
お次は二階へ。
案内の方がエレベーターか階段で
と教えてくれた。
もちろん階段を利用する。
あのステキな階段を登れるなんて嬉しい。
私は写真をパチパチしてから息子に続く。
上がって右手に金沢出身の有名な方のコーナーがあった。
漆風呂に目が留まる。
金継ぎをしていた母が漆でかぶれて大変な目に遭っていた。
顔と手に少し付いたにも関わらず体に広がったから。
最初そんな話を聞いた時、母を疑った。
そんなはずないでしょ。
漆が付いた手で足やお腹触ったんでしょ、と。
しかし漆という物は血液を媒介するらしい。
そして体の柔らかい所に出てしまう。
今はとりあえず納得したが、真相は分からない。
完治まで一ヶ月かかった。
漆、侮るべからず。
奥にはその方の持ち物と手帳があった。
写真オッケーの鳥のスケッチ。
とってもステキだった。
そのすぐ上は写真NGマーク。
すぐさま係員に声をかけて、その下の写真撮りますからね、上じゃありませんからとアピールする。
これで安心して撮影できる。
手帳には一言やスケジュールの外にスケッチが度々出てくる。
日常的にスケッチしていたんだな~と感心した。
少しだけスケッチする先生の動画を見てから移動した。
息子が
ママの好きそうなのあるよ
と声をかけてくれる。
よく分かってる息子くん。
器が大好きな私。
ボーンチャイナコーナーにきた。
この中でどれが好き?
と、いっせーのーでで指をさす。
いっせーのーでが大好きな私。
その先に進むと私好みのティーセットや珈琲ポット関連が出てきて、私ははしゃいでしまう。
息子に声を掛けては感嘆する私に
ママ静かに!
とひそひそ注意する我が息子。
私はまた我に返った。
ほんとにどちらが子どもか分からない。
私みたいな親だと子どもはしっかりするのかもしれない。
そういえば、いつの間にか娘も息子も人前では私より冷静でしっかりしている。
これで良かったんだと今のところ思っている。