珈琲と道具

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私は独身時代にバリスタをかじった。
その頃は特に珈琲好きではなかったが、勤めていた会社の新たな事業オープンにより東京の銀座に降り立った。

このお店はバリスタ世界大会で当時一位を勝ち取ったという外国の若者が勤める外資系珈琲店の日本店で、その若者も何故かここにいた。
遊びに来ていたのだろうか。
珈琲に憧れなどあまりなかった私は彼の凄さに気が付かず興味がなかったので特に記憶にない。
たぶんイタリア人。

珈琲好きだったら色々と聞いたり教えてもらったかもしれない。
今思えば勿体なかったかもしれない。
しかしそんな余裕はない。

そこは普通の珈琲店とは違い、珈琲豆を二倍量使用して抽出する。
珈琲豆を押し込む作業をタンピングというのだが、これが本当に大変。
何しろ全体重をかけて珈琲豆を押し込む必要があり体力消耗が激しい。
普通の珈琲店はポンと軽く押すだけでオッケーな所、こっちは二倍量なのだからわけが違う。
どこぞのチャンピオンどころの話ではなかった。

本格的に珈琲が好きになったのは20代半ばにさしかかる頃。
雑貨屋さんで度々目にしていたKONO式珈琲。
お値段問題で躊躇していたが、思いきる。

初めて購入したKONO式のコーヒーセット。
プラスチックのドリッパーとガラスのポット。
持ち手は木にした。
これが入った乳白色の箱すら可愛い。

それはもうコーヒーを淹れるのが楽しい毎日で、KONO式を使いたいが為にコーヒーを飲んでいた。
味にこだわりもなく、KONO式経由のコーヒーという所が肝心であった。

ほどなくして、
かもめ食堂と出会う。
大好きな小林聡美・片桐はいり・もたいまさこの三神が出演するフィンランドが舞台の映画。
もちろんDVDは入手済み。
ここで珈琲の話が出てくる。

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コピ ルアック

と言って珈琲豆の真ん中に指で穴を空ける。
そこに向かってドリップ。
もちろん私達も真似をする。
その頃、わたしの姉は向かいのマンションに住んでいたので度々会っていた。
姉と一緒にルアックごっこをして楽しむ。

ルアックというのは、インドネシアにいるジャコウネコ。
このルアックは美味しい珈琲の実だけを選んで食べる。
食べた実は未消化のまま糞として出てくる。
そう、それがルアックコーヒー。
とても希少で高値で取り引きされている。

そんなルアック珈琲豆を幸運なことに何度か譲ってもらえていた。

香りが全く違う。
何ともいえぬアロマで香りだけで幸福感に満たされる。
お味はとっっっても深くてまろやか。
酸味や苦味とはまた違った印象を受けた。
ここ数年はルアックを頂く事がなくなり少し寂しい。


毎朝の珈琲が習慣になっていて、その時は来た。

ガチャン
愛用のKONO割る。
ドリッパーだけになってしまった。
そんなドリッパーもプラスチックだから大丈夫というわけはなく、普通に割ってしまう。
というより下部分を欠けさせてしまった。

肌が弱い私は肌に優しい食器洗い洗剤を使っていた。
その洗剤がよく滑る。
お皿を何枚も滑らせては割っていたので注意していた。
にも関わらず割ってしまう、あのKONOちゃんを。

かなりショック。

私の記憶では新しいKONOを手に入れてまた割った気がする。
それからKONOは買えなくなってしまった。

KONOへの憧れは未だにあるものの、あのショックから買えずにいる。

今は専用のポットも持っていない。
だいたい一人分なのでカップに直置きでドリップ。
しかも愛用の月兎印のスリムポットから直注ぎ。。
スリムポットはお湯を沸かす用につかっているけれど、あれは実は珈琲ポット。
本来は月兎の上にドリッパーを置いて珈琲抽出。
雑貨屋さんの店主から聞いた時は驚いた。
ケトルだと思ってた。。

ここ最近になってドリップポットを初購入。
見た目がドストライクな上に性能も良しとある。
一ヶ月悩んで購入。

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初ドリップした時は興奮した。
お湯の線がほっそりと滑らか。
持ち手が手にすんなり馴染むのでドリップしやすい。

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月兎からのゴボッ!ではなく繊細な調べ。
買って良かったが増えた。

KOGUのドリップポット大はIH使用可。
沸かしてドリップでも良いが、私は月兎で沸かしたお湯をKOGUに移してから使っている。
適度に温度が下がって珈琲に適する。
使った後は熱いうちに手早くクロスで拭けば水滴跡も残らずお手入れが楽。
クロスを上にかけておけば埃も入らずストレスフリー。

珈琲に関する色々が時間をかけて少しずつ集まってくる。
素材やブランドもまちまち。

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それでも違和感を感じないのは自分が好きな物の集まりだから。
そして一つ一つに小話がある。

白のデミタスカップ。
東京のとある雑貨屋さん。
姉が住んでいた目黒通りにあった。
お店の名前を2人とも忘れてしまって、勝手にママンレーヌにした。
何かそんな感じだったしね。

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